2018年度トルコ調査報告会プログラム

2019年3月25日(月)

13:00  挨拶
阿部 知之 (中近東文化センター理事長)
13:10  アナトリア考古学研究所の活動(2018年)
大村 幸弘 (中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所所長)
13:45  第10次ビュクリュカレ発掘調査
松村 公仁 (中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所)
14:35  休憩
14:50  第33次カマン・カレホユック発掘調査
大村 幸弘 (中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所所長)
15:40  第10次ヤッスホユック発掘調査
大村 正子 (中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所)
司会:吉田 大輔 (中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所)
17:00  懇親会

2018年アナトリア考古学研究所の活動

当研究所は発掘調査を基とする研究活動と、その社会還元を目指した活動を継続しています。2018年度も、ビュクリュカレ、カマン・カレホユック、ヤッスホユックの3遺跡における発掘調査に併行し、植物遺存体、考古学、保存修復に関するフィールドコースを行いました。これらのフィールドコースは、日本、オーストラリアの専門家の指導の下、日本、トルコ、オーストラリアの学生、若手保存修復士が参加しました。また、研究所ではクルシェヒル近郊の 学生や市民を対象に、前年度の発掘調査に関する報告会を開きました。さらに、カマン・カレホユック考古学博物館と協力して、講演会や子供たちへの考古学教室なども行ないました。博物館来館者への案内解説にも、可能な限り協力しています。

ビュクリュカレ発掘調査

ビュクリュカレはクズルウルマック河西岸に位置し、岩丘部とそれを取り囲む平地部からなる径約600mの都市遺跡です。紀元前2千年紀、特にヒッタイトの都市の調査を主目的としていますが、2018年度は昨年同様、ヘレニズム、後期鉄器時代の層の調査を行い、後期鉄器時代の巨大な城壁とこれに平行する建築遺構およびその出土品から、フリュギア王国末にアナトリアに侵入した騎馬民族とその後のアナトリアの歴史に関して新たな知見を得ることができました。

カマン・カレホユック発掘調査

カマン・カレホユックは、トルコ共和国の首都アンカラの南東約100キロ、クルシェヒル県、カマン郡の中心都市カマンの東約3キロ、アンカラ—カイセリの旧街道側に位置しています。径280メートル、高さ16メートルで、アナトリアでは中規模の丘状遺跡です。 本遺跡では文化編年の構築を目的とする調査を継続しています。2018年度も北区では前期青銅器時代の火災を受けた建築遺構を、南区ではヒッタイト帝国、古ヒッタイト時代の遺構の調査を行い、紀元前3千年紀から2千年紀の文化編年の再構築が確かなものになりつつあります。

ヤッスホユック発掘調査

ヤッスホユック は中央アナトリアを南北に走る幹線道路上にあり、カマン・カレホユックから約25km東に位置します。南北500m、東西625m、高さ13mの比較的大きな遺丘です。2009年以来行なわれている遺丘中央部での発掘調査では、第Ⅰ層:鉄器時代、第Ⅱ層:中期青銅器時代、第Ⅲ層:前期青銅器時代の3文化層が確認されています。2018年度は遺丘北裾野で、遺丘の第Ⅱ層と同時期と考えられる遺構群の調査を開始し、紀元前2千年紀前半のアナトリアにおける「下の町」の構造と編年を新たに検証することとなりました。