2017年度トルコ調査報告会プログラム
2018年3月25日(日)
- 13:00 挨拶
- 阿部 知之 (中近東文化センター理事長)
- 13:10 アナトリア考古学研究所の活動(2017年)
- 大村 幸弘 (中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所)
- 13:45 第9次ビュクリュカレ発掘調査
- 松村 公仁 (中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所)
- 14:35 休憩
- 14:50 第32次カマン・カレホユック発掘調査
- 大村 幸弘 (中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所)
- 15:40 第9次ヤッスホユック発掘調査
- 大村 正子 (中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所)
- 司会:吉田 大輔 (中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所)
- 17:00 懇親会
2017年アナトリア考古学研究所の活動
アナトリア考古学研究所の活動の基本は、第1に発掘調査と研究、第2に若手研究者の養成、そして第3に社会還元活動です。2017年度もこの基本に則り、ビュクリュカレ、カマン・カレホユック、ヤッスホユックの 3遺跡の発掘調査、若手研究者を対象とする、植物遺存体、考古学、保存修復に関するフィールドコース、そして、発掘現場とカマン・カレホユック考古学博物館における子供たちへの考古学教室、ミニ講演会などを実施しました。2017年3月以降、博物館への来館者が急増したこともあり、従来に増して来館者への案内も行っています。
第9次ビュクリュカレ発掘調査
クズルウルマック河西岸に位置する紀元前2千年紀の都市遺跡ビュクリュカレにおける調査では、ヒッタイト時代層の解明に主眼を置いています。今年度は3地点で異なる目的を持って調査を行いました。1)楔形文字粘土版文書が出土したヒッタイト帝国時代に属する大型建築遺構の火災跡の調査を北に拡大する。2)前ヒッタイト時代(カールム時代)の宮殿と思われる巨石建築遺構の7mの高さを持つテラス壁の続きを解明する。3)発掘区を広げてカールム時代の巨石建築遺構の西側部分を調査する。ヒッタイト帝国時代の建築遺構は、後期鉄器時代の半地下式の建物や2m以上も掘り込まれた大型穀物貯蔵穴によって破壊されていたため、それらの調査に追われてしまいましたが、以前発掘した部屋の再調査では、そこが青銅製品製作の工房であったことが明らかとなりました。紀元前2千年紀には、宮殿内にこのような工房を持ち、生産が管理されていたことが知られています。
第32次カマン・カレホユック発掘調査
カマン・カレホユックは、トルコ共和国の首都アンカラの南東約100キロ、クルシェヒル県カマン郡の中心であるカマン市の東約3キロ、アンカラ—カイセリの旧街道沿いに位置しています。遺跡の西裾には小川が流れており、遺跡周辺は小麦畑にとり囲まれています。径280メートル、高さ16メートルで、アナトリアでは中規模の丘状遺跡ですが、オスマン時代から新石器時代までの文化層が堆積しています。今季は、北区において第IV層前期青銅器時代の火災層を中心に調査し、南区では第IId層前期鉄器時代から第III層青銅器時代へ掘り進めました。
第9次ヤッスホユック発掘調査
ヤッスホユック は、中央アナトリアを南北に走る幹線道路上にあり、カマン・カレホユックから約25km東に位置し、南北500m、東西625m、高さ13mの比較的大きな遺丘です。遺丘中央部では第Ⅰ層:鉄器時代、第Ⅱ層:中期青銅器時代、第Ⅲ層:前期青銅器時代の3文化層が確認されています。今季は、主に鉄器時代層の発掘調査を行いました。後期鉄器時代の後半の層、さらに下層の大遺構群の発掘調査を継続し、その遺構を一部取り外したところ、中期鉄器時代の遺構が出土し始めました。また部分的には、第Ⅲ層の焼土層が観察されています。この焼土層には2層あり、上層は王宮址と見られる前期青銅器時代末の大遺構が出土している層ですが、その下の第2の火災層については、今後調査を進めます。
遺丘頂上北部で行った地中探査では、遺丘中央に向かう遺構群と遺丘の稜線に平行に見られる遺構群の間に約20m幅の間隙があり、中央の建物群と城壁関連施設間の道路である可能性が考えられます。