フィールドコース
フィールドコースは、考古学及び関連分野に興味を持つ学生、若手研究者を対象に、カマン・カレホユック発掘調査を基盤に、出土した遺物等を使って、研究の基礎知識、方法を指導する入門コース、さらにより研究を深めるためのアドバンスコース等、時々に応じて専門家によってアレンジされます。今までに、保存修復、植物考古学、動物考古学、形質人類学、古環境学、考古学等の分野で行なわれてきました。
■考古学フィールドコース(2017年)
アナトリア考古学研究所が主催する考古学フィールドコースは、7月31日から8月12日までの二週間にわたってカマン・カレホユックの遺跡で行われました。
今回のコースには、日本の大学から6名が参加し、初日は発掘現場を見学、二日目からカマン・カレホユックで実際に発掘調査に入りました。今シーズンは、北区で鉄器時代と前期青銅器時代の二カ所、南区で後期青銅器時代を発掘しており、その各発掘区に学生が2名ずつ入り発掘を行いました。ほとんどの学生は発掘が初めてと云うこともあり、現場では隊員、ウスタ(親方)と呼ばれる熟練労働者の指導のもとに調査の基本から教わりながら作業を進めました。
また、カマン・カレホユックから出土した彩文土器、青銅製フィブラなどの遺物に関する研究も行われ、 夜遅くまで研究所の図書室で文献資料を読みながらレポートの作成をしていました。最終日に行われた遺物研究のプレゼンテーションの発表はなかなか上手くまとまっていましたが、生の資料をもとにレポートを書き上げる作業は初めてということもあり、かなり苦労したようです。彼らには良い勉強になったのではないかと思います。
8月6日の日曜日には、世界遺産でもあるヒッタイト帝国の都ボアズキョイ、帝国時代の都市の一つであるアラジャホユックの見学も行いました。ボアズキョイの現場では、隊長のアンドレアス教授からの解説もあり有意義な一日を過ごすことができました。フィールドコースが始まって数日は体調を崩す学生もおりましたが、第二週目には全員発掘現場、研究所の生活にも慣れたようで、元気に規定のプログラムをこなし、13日の午前中にはカマンを無事に離れました。(2017年8月30日)
■植物考古学フィールドコース
カマン・カレホユック発掘調査では、これまで5千近くのピット(廃棄用、あるいは貯蔵用の坑)が確認され、ヤッスホユック、ビュクリュカレでも数多くのピットが見つかっており、各ピットからはバケツ二杯程の土が袋に入れられ研究所に運び込まれています。それを一つ一つ洗い、中に含まれている種を探し出す作業を、この十年オーストラリアのアンディ・フェアバーンさんが中心となって進めています。それと同時にこの作業は一人や二人で出来るものではなく、多くの若手を養成する必要があります。アンディーさんは、七月に一週間、二年に一度のペースで植物考古学のフィールドコースをアナトリア考古学研究所で行っています。今シーズンもアンディーさん、ローナさんを中心にオーストラリアの学生が4人参加して行われました。発掘と同様、植物考古学の基礎資料を作成する作業は、乾燥した種を実体顕微鏡でじっくり観察しながら整理をすると云う極めて地味なものです。それをフィールドコースではアンディーさんが丁寧に学生に教えているのが印象的でした。次回は日本の学生も参加して欲しいと思います。 (2017年8月30日)