フィールドコース
フィールドコースは、考古学及び関連分野に興味を持つ学生、若手研究者を対象に、カマン・カレホユック発掘調査を基盤に、出土した遺物等を使って、研究の基礎知識、方法を指導する入門コース、さらにより研究を深めるためのアドバンスコース等、時々に応じて専門家によってアレンジされます。今までに、保存修復、植物考古学、動物考古学、形質人類学、古環境学、考古学等の分野で行なわれてきました。
■考古学フィールドコース(2013年)終了
2013年度考古学フィールドコース第2回が9月9日(月)より21日(土)までの13日間にわたって行われました。初日に、アナトリア考古学研究所とカマン・カレホユック考古学博物館でアナトリア考古学の概論、層序、発掘の方法、カマン出土の土器等に関する講義を受け、2日目からはヤッスホユックの発掘調査に参加するとともに、遺物研究を行いました。遺物研究は、カマン・カレホユックから今シーズン出土したばかりの遺物をそれぞれが1点選択し、観察研究を行うもので、レポートにまとめ、最終日に口頭発表を行いました。15日(日)には、フィールドトゥリップとしてヒッタイト帝国の都ボアズキョイを見学しました。
毎日夕方6時から行なわれるミーティングでは、その日の発掘に関する報告の他、 保存修復、植物考古学、地中探査、分析科学等の分野から参加している隊員のそれぞれの研究、調査に関する報告もあり、総合科学としての考古学、発掘調査を実感できたのではないかと思われます。(2013年9月24日)
■考古学フィールドコース(2013年)途中経過
アナトリア考古学研究所が主催する考古学フィールドコース(2013)は、8月12日から24日まで行なわれました。今回のフィールドコースには明治大学、千葉大学、東京理科大学等の学生7名が参加しました。コース受講者は、初日に『アナトリア考古学概論』の授業を受けた後に、カマン・カレホユック遺跡に入りました。現場ではカマン・カレホユックの発掘区の解説、そして発掘調査を行って行く上での手ほどきを受け、初日から発掘現場に入りました。ほとんどの学生は発掘が初体験であり、その上トルコ語を勉強しているわけでもないため、大分苦労をしていたようです。
今シーズンのカマン・カレホユックでは北区、南区の2発掘区で調査が進められていますが、参加した学生は初日から各発掘区に入りトルコ人の労働者と意思疎通のために辞書を片手に頑張っているのが印象的でした。カマン・カレホユック発掘調査では、ウスタ(親方)が中心になり発掘が進められていますが、ウスタには1〜2名のカルファ(親方補)、そしてその側にはチラック(丁稚)がおり、そのシステムの中に学生も組み入れられての作業です。
フィールドコースのプログラムは、調査隊員と同じで、発掘作業は月〜土曜日まで、5時起床、5時15分朝食、6時〜2時まで作業、6時ミーティングとほぼ同じテンポで進められました。この二週間で参加した学生は、実際に労働者に混じって発掘調査を行ったと同時に、各学生には一つの遺物(彩文土器、青銅製ピン、黒色磨研土器、青銅製鏃等)が与えられ、それに関する研究も行ないました。6時のミーティングでは、その日に行なった発掘に関しての報告を行い、7時半の夕食後は日誌を書くのが毎日の日課で、受講者にとっては予想していた以上にハードだったようです。
一週間が過ぎたところで、昨年、世界遺産に登録された新石器時代のチャタルフユック遺跡の見学もありました。チャタルフユック遺跡の側にあるイギリス隊が発掘調査を行っているボンジュックル遺跡も訪ね、ダグラス隊長から一時間以上にわたっての解説もありました。貴重な体験をしたのではないかと思います。この遺跡は無土器新石器時代のもので、円形の建築遺構が確認されております。
第二週目は、参加した学生は発掘調査後、与えられた遺物研究に時間の多くを取られ、深夜遅くまで研究所の図書室にこもっていました。24日の最終日、4時から遺物研究の結果をプレゼンテーションの形で各自が発表し、フィールドコースの全ての日程を終了、25日(日)、10時30分、カマンのアナトリア考古学研究所を離れました。
第二回目の考古学フィールドコースは、9月9日から二週間の予定で行なわれる予定です。(2013年9月7日)
■植物考古学フィールドコース(2013年)
アナトリア考古学研究所はクイーンズランド大学(オーストラリア)と共催し、7月9日から13日まで植物考古学フィールドコース(2013年)を行ないました。講師には、クイーンズランド大学のアンドゥリュー・フェアベルン准教授を招きました。アンドゥリュー准教授は、中央アナトリアのチャタルフユック、ボンジュックル等の遺跡で植物遺存体の研究を長期に渡って行なって来ており、カマン・カレホユック遺跡にもこの10年間関わっています。このコースを開催した主目的は、アナトリア考古学で植物遺存体に関する研究者が未だに希薄であると言うことから、若手研究者を養成することにあります。今回のフィールドコースには、オーストラリア、アメリカ、トルコ等の学生が9名参加し、カマン・カレホユック、ヤッスホユック、ビュクリュカレ遺跡のピット、炉址等から採集した土をフローテンションマシン(種子を採取する装置)で洗い、中から植物遺存体、特に種子を検出する作業を行いました。連日、各遺跡のサンプルの洗いと同時に、種子の選別を丹念に行い、実体顕微鏡を使いながら種子同定作業をアンドゥリュー准教授の指導の下に行ないました。今回のコースでは、ヤッスホユック、ビュクリュカレ遺跡で検出された種子から、前2千年紀のアナトリアであまり見られないサンプルが確認されました。これをどのように解釈するかは、今後、発掘者、文献学の研究者等を交えての討論が盛んに行なわれるものと思います。フィールドコース参加者は14日(日)にヒッタイト帝国の都・ハットゥシャを見学し、15日の午前中に研究所を後にしました。(2013年7月16日)